作品 画集が苦手 度会わたらいくんは画集が苦手だと言った。一冊のなかに絵が何枚も入っていて、そのどれもが最初は本の中に入る気なんかなくて、一枚一枚おのおののやり方で、およそ読書に似合わない仕方で自分に交渉を要求してくるのが、度会くんには耐えられないらしい。「... 2025.08.10 作品小説
作品 交差点 すみれは交差点に立つことを想像する。渋谷のスクランブルみたいに大きな交差点では意味がない、かといって田舎のさびれた、人のまともに通らないところでもないような、ちゃんと都市の血管として機能していてかつ見晴らしのきく、夕焼けがわりあいに似合う交... 2025.08.10 作品小説
作品 夜の観察 夜というものの暗さが、まず第一に身体を包みます。とぷんと闇に身を差し入れて、全身を浸してみて、夜はとびきりの無音か、うだるような騒音にしゃかしゃかと降りしきられて、それが通過するか跳ね返るかで自分の身体に空あいたきめの細かさを測りながら、ひ... 2025.08.10 作品小説詩