作品

その他の作品

【翻訳】月曜あるいは火曜

著:ヴァージニア・ウルフ訳:小径章 気だるげにそして無頓着に、その翼でたやすく大気を震わせながら、どこを行くべきか心得て、アオサギは空の下なる教会の頭上を行き過ぎる。白く遠く、自分自身に吸いこまれるように、終わりなく空に隠れまた晒され、動き...
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記憶の祈り

更新される記憶たちが入り乱れ折り重なりつつひとつの像をたえず結びつづけるのを僕らは静止画に思いなしてかたいかたい論理を大脳にがっちりと組み上げてはその死人のような美しさに我を忘れる会えない人と会える人とかつて会った人のことを同時に思い出すと...
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ほしぞら

あなたがここにこのようにやぶれかぶれで、しかしそのことを悟らせまいと素知らぬふりしてぽつねんと立ち尽くしているのは幸いというもので、そのおかげであなたは差し延べられるいくつもの手のひらに次々頬を殴られたりせずすむのです。いったい手というもの...
おしらせ

文藝ヴィエラ、そして「文藝」について

たいへん遅ればせながら、2月8日(日)に江古田フライング・ティーポットで開催した朗読リーディングショーケース「文藝ヴィエラ」にご来場のみなさま、遠くから気にかけてくださったみなさま、ありがとうございました! 衆院選と豪雪に挟み撃ちされた格好...
その他の作品

【翻訳】存在の瞬間:「スレイター社のピンは尖ってないね」

著:ヴァージニア・ウルフ訳:小径章「スレイター社のピンは尖ってないね――いつもそう思わない?」ファニー・ウィルモットのドレスから薔薇の飾りが落ちたときに、くるりと振り返ってミス・クレイは言った。そうしてファニーは音楽が鳴り響くなか、ピンを探...
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仮面葡萄会

仮面をかぶった老若男女がおびただしい葡萄の山をミサのように輪になって踏みしめ踏みしめ、足を取られた貴婦人がぐずぐずに崩れた葡萄に倒れ込むのをだまって粛々と輪になって踏みしめ踏みしめ、虫の息の最後の力を振り絞って掴んだ足首が死にかけの身体の埋...
作品

画集が苦手

度会わたらいくんは画集が苦手だと言った。一冊のなかに絵が何枚も入っていて、そのどれもが最初は本の中に入る気なんかなくて、一枚一枚おのおののやり方で、およそ読書に似合わない仕方で自分に交渉を要求してくるのが、度会くんには耐えられないらしい。「...
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ここは六月

世界に対する、希望と言いますか、期待と言いますか、春の陽のさんさん降り注いだようなやつが、どことなーくいい香り漂うそいつが、うっちゃられて見向きもされずぐずぐずに腐っていくことが、人生の各局面、中だるみの倦怠のなかで発生することがままありま...
作品

ねじれの位置

交わらない直線のうち平行でないものをねじれの位置にあるといいます先生わたしたちはねじれていますかせめてねじれることが出来るなら先生もねじれてみたいものですねわれわれはねじれるにはあまりにも動きすぎます先生わたしたちは動くことをやめさえすれば...
作品

交差点

すみれは交差点に立つことを想像する。渋谷のスクランブルみたいに大きな交差点では意味がない、かといって田舎のさびれた、人のまともに通らないところでもないような、ちゃんと都市の血管として機能していてかつ見晴らしのきく、夕焼けがわりあいに似合う交...