作品 仮面葡萄会 仮面をかぶった老若男女がおびただしい葡萄の山をミサのように輪になって踏みしめ踏みしめ、足を取られた貴婦人がぐずぐずに崩れた葡萄に倒れ込むのをだまって粛々と輪になって踏みしめ踏みしめ、虫の息の最後の力を振り絞って掴んだ足首が死にかけの身体の埋... 2025.08.10 作品詩
作品 ここは六月 世界に対する、希望と言いますか、期待と言いますか、春の陽のさんさん降り注いだようなやつが、どことなーくいい香り漂うそいつが、うっちゃられて見向きもされずぐずぐずに腐っていくことが、人生の各局面、中だるみの倦怠のなかで発生することがままありま... 2025.08.10 作品詩
作品 ねじれの位置 交わらない直線のうち平行でないものをねじれの位置にあるといいます先生わたしたちはねじれていますかせめてねじれることが出来るなら先生もねじれてみたいものですねわれわれはねじれるにはあまりにも動きすぎます先生わたしたちは動くことをやめさえすれば... 2025.08.10 作品詩
作品 口頭発表 証明します。 機上の意志は、無覚悟の発端。弁別するにも骨が折れる。未知数を仮定するとして、その妙味は飛行機のエンジン音くらい気にならない。 歩行を阻害する信頼の嵐。 めくらめっぽう光を発して機内全域は肉弾を放棄。 ぱちぱちとひとが死ぬ、ひと... 2025.08.10 作品詩
作品 夜の観察 夜というものの暗さが、まず第一に身体を包みます。とぷんと闇に身を差し入れて、全身を浸してみて、夜はとびきりの無音か、うだるような騒音にしゃかしゃかと降りしきられて、それが通過するか跳ね返るかで自分の身体に空あいたきめの細かさを測りながら、ひ... 2025.08.10 作品小説詩